PMMになって約5ヶ月。新規プロダクトはまずはPMFを目指すということをよく耳にするようになりました。
改めてPMFとはなんなのか?PMMとどのように関わりがあるのか?といったことを説明していきたいと思います。
PMMとPMFの関係について
プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)とプロダクトマーケットフィット(PMF)は、密接に関係する概念です。PMMはプロダクトの市場適合性を高め、ビジネス成果を最大化する役割を担う職種です。具体的には、どんなプロダクトが市場に求められているのか要望や要求を整理し、PdMとともに要件定義をし、プロダクトのリリース後のグロースのためのマーケティングに責任を持つポジションです。そのため、PMMにとってPMF(=市場適合性)の達成は最も重要な目標の一つです。
PMFとは、顧客のニーズを満たす商品で、正しい市場(潜在的な顧客がたくさんいる市場)にいることをPMFと定義します。PMMは市場調査、ポジショニング、顧客フィードバックの分析、プロダクト要望整理と要件定義、マーケティング戦略の実行を通じて、このPMFを実現するための重要な役割を果たします。
PMMが適切に機能し、プロダクトと市場のギャップを埋めることで、PMFを達成する可能性が高まります。そして、PMFを達成することで、プロダクトの成長が加速し、より強固なGo-To-Market(GTM)戦略を構築できるようになります。
私がPMMになり、PMFを学んだ本は以下の栗原康太さん著書の「新規事業を成功させるPMF(プロダクトマーケットフィット)の教科書」です。今回の記事を書くにも参考にさせていただいております。
PMFとは何か、PMFを達成するまでの道のり、PMFの測り方、実際の会社のPMF事例などが載っており、PMMやPdMはもちろんプロダクトマーケティングに関わる全ての職種の方に参考になる1冊かと思いますのでぜひ読むことをお勧めいたします。
PMFとは
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは、顧客のニーズを満たす商品で、正しい市場(潜在的な顧客がたくさんいる市場)にいることをPMFと定義します。プロダクトが市場のニーズに適合し、顧客が積極的に利用する状態を指します。PMFを達成したプロダクトは、顧客が積極的に利用しているからこそ、顧客からの問い合わせに追われる状態になったり、プロダクトの発注が多く発生し人手が不足するといった状態が発生する特徴があります。
PMFを達成するための道のり
PMFを達成するまでの道のりをフィットジャーニーとよばれるフレームワークに沿って説明していきます。

(出典:スタートアップ・フィット・ジャーニー 今どの段階にいて、何に取り組むべきかのガイド(https://review.foundx.jp/entry/startup-fit-journey)
PMFを達成するまでのフィットジャーニーは以下4つです。それぞれ説明していきます。
- CPF(カスタマープロブレムフィット)
- PSF(プロブレムソリューションフィット)
- SPF(ソリューションプロダクトフィット)
- PMF(プロダクトマーケットフィット)
CPF(カスタマープロブレムフィット)
フィットジャーニーの一つ目のステップはCPF(カスタマープロブレムフィット)です。
顧客が本当に課題を抱えているのかを問うプロセスとなります。新たなプロダクトを検討する際に自社でできるソリューションから検討を開始してしまいその課題を抱えている顧客が存在せずに失敗するということが往々にしてあります。
想定している課題を顧客が本当に抱えているか、それがどれほど深い課題なのか、競合が存在する場合は競合がこれまで解決できていない課題は何かを検証するプロセスとなります。
この際に向き合う課題としては可能であればバーニングニーズと呼ばれる切迫したニーズや課題を特定できるのが望ましいです。なぜならばバーニングニーズとは顧客が今すぐにお金をかけてでも解決したいと考えている可能性が極めて高いためです。当然そのような強い課題感にアプローチすることができればその後の営業やマーケティングの効率、成長スピードが格段に良くなります。
PSF(プロブレムソリューションフィット)
フィットジャーニーの二つ目のステップはPSF(プロブレムソリューションフィット)です。
CPFで特定した課題に対して、自分たちが提供する解決策が顧客が求めるものかどうかを検証するプロセスとなります。
営業資料やランディングページの作成、モックやプロトタイプ、MVPの作成をして顧客に当ててみて求められているものかどうかを検証します。
ポイントとしては必要以上の工数をかけないようにするため、ミニマルで提供しようとしている解決策を伝えることを心がけることです。必要以上に作り込みすぎて顧客が求められているものと違った際にリカバリーするコストリスクがあるためです。
SPF(ソリューションプロダクトフィット)
フィットジャーニーの三つ目のステップはSPF(ソリューションプロダクトフィット)です。
PSFで顧客に当てたソリューション(解決策)が、プロダクトとして自社で実現可能か、解決策を十分に実現できるのかを検証するプロセスとなります。
顧客要望を十分に吟味し、要件定義をし、顧客や自社に求められるスケジュール感と合うのかなどを考慮していきます。エンジニアのアサインや開発ロードマップを準備し、スケジュール、リソース、実現性の観点から”実現可能か”を検討していきます。
PMF(プロダクトマーケットフィット)
フィットジャーニーの四つ目のステップはPMF(プロダクトマーケットフィット)です。
SPFで確かめられたプロダクトを開発・リリースし、実際の販売活動を行って商談を獲得できるのか?受注できるのか?そして、プロダクトを利用した顧客が満足してくれるのか?を検証するプロセスとなります。
このフェーズの目的は事業の成長ではなく、あくまでもPMFの達成に主眼を置くのが大事です。検証段階のため事業の確証性が低く、諸々軌道修正が発生するリスクからアクセルを踏みすぎないよう、会社によってさまざまとは思いますが、必要最低限の顧客に対して検証していくようにしたほうが良いです。イメージ5社程度に当ててみるといったレベルでPMF検証を進めたほうが良いかと思います。
このフェーズまで来るとビジネスサイドと連携して販売活動が発生するため、本格営業を開始しても問題ないと勘違いする人も出てくるためPMMがしっかり販売活動を制御していく必要性があります。
ビジネスサイドに遠慮して、必要以上に顧客提供が発生し、問題が起きた場合の火消しリスクが高くなってしまうのでPMMはしっかりコントロールする必要があります。
PMFの計測方法
PMFを計測するためには、以下のような指標を用います。
1. 先行指標
早期にPMFを計測する手段が選考指標です。以下のような指標があります。
- ショーンエリテスト
- NPS
- エンゲージメント
ショーンエリテスト
「このプロダクトが使えなくなったらどう感じるか?」とユーザーに尋ねて、「とても残念」「まあ残念」「あまり残念ではない」「無回答(もうこのプロダクトを使っていない)」の 4段階で答えてもらう計測方法です。
「とても残念」の回答が40%を超えたらPMFしていると判断できると言われています。
NPS
顧客に友人や知人にお勧めしたいかどうかを尋ねて、「0(全く思わない)」から「10(非常にそう思う)」の11段階で評価してもらいます。0~6を「批判者」、7と8を「中立者」、9と10を「推奨者」とし、推奨者から批判者を引いた数をスコアとします。
エンゲージメント
新規ユーザーがプロダクトの使用を開始後、利用を停止していないか、どの程度アクティブに利用しているかを分析する方法です。
アクティブの定義はプロダクトの適切な使用頻度により異なりますが、適切な使用頻度と想定している頻度使用されているかどうかが基準となります。
使用されていない場合は何かしか顧客の使用する環境にフィットしていないということになりますので原因を突き止め、プロダクトの改修を検討しましょう。
2.遅行指標
PMFを図る指標として非常に有効ではありますが、、事後的にしかわからない指標も紹介します。
リテンションレート
商品が実際に使われ続けているかどうかを計測する指標で「何日後に何%の顧客が残っているか」を計測します。
toC向けプロダクトであれば1日後7日後14日後30日後といった顧客維持率を見るケースが多く、toBプロダクトであれば月次Q時年次での解約率を使うことが多いでしょう。
ユニットエコノミクス
顧客生涯価値(LTV)を顧客獲得コスト(CAC)で割った計算式で求めます。一般的に(LTV÷CAC)が3以上だと望ましいとされています。
レベニュー
事業で稼いでいる定期的な収益を指します。SaaSの世界では「T2D3」と言われる、Triple(3倍)、Triple(3倍)、Double(2倍)、Double(2倍)、Double(2倍)でARR(年間計上収益)が成長している企業は時価総額1,000億円以上のスタートアップを指すユニコーンになれるとされています。
訂正的な指標
新規プロダクト(事業)の立ち上げ時にはユーザー数、顧客企業数が少ないことが多く、上記したショーンエリステストやNPSでは定量的に傾向が見出せないこともあります。そのような場合には定性的な指標を持っておくことも重要になります。
例えば以下のようなものがあります。
- 商品ができていないのに契約が取れる
- 商品の熱狂的なファンがいる
- 今まで社長しか売れなかった商品が新卒1年目でも売れるようになる
PMMは1度きりではない
前述してきた道のりや計測方法を経て、無事にPMFを達成したとしても、事業フェーズが代わり顧客が増えて、ニーズや要望が増加することで、1度目のPMFプロダクトでは顧客のニーズを満たせなくなるまたは、正しい市場から外れてしまうことで2度目以降のPMFを目指す必要が出てきます。
つまり、PMFを重ねていくことで企業は成長していくのです。
とあるプロダクトで1度目のPMFを完了して安心し、次のプロダクトの企画開発拡販に気を取られている間に、市場や競合状況が代わりPMFしていたはずのプロダクトが市場適合性を担保できなくなっているといった事象は往往にして起こり得ます。PMFは複数回環境の変化に応じて発生するものだということをまずはしっかり頭に入れておきましょう。
PMF後の成長の方向性
PMFして特定の市場でニーズを満たすプロダクトを提供することができた後、継続的に成長させていく方向性は四つに分けられます。
- 既存セグメントの獲得に注力する
- 既存セグメントにアップセルする
- 新しいセグメントに広げる
- クロスセル商品を開発する
現在PMFを達成しているセグメントはどのようなセグメントなのかを分析した上で次の成長戦略を立てていく必要があります。
PMFを達成するためのきっかけ
PMFを達成するにあたってきっかけとなったできことはなんなのかを説明していきます
主なきっかけとしては以下です。
- 顧客に向き合う
- 入念なリサーチ
- 受託開発・コンサルティング
- コンセプト創出
- ターゲット変更
- キラー要素の発見
- 市況変化への対応
その中でも特に大事になってくるのは顧客に向き合うことです。顧客に対して真摯に向き合った結果、課題、解決ソリューション、プロダクトの追加改修、市場に対して発信するメッセージなどのヒントが見えてくるわけです。
プロダクトは顧客の課題解決の手段でしかありません。向き合うべきは顧客の課題、課題の背景です。
まとめ
PMF(プロダクトマーケットフィット)は企業の成長に欠かせません。市場適合性を取り続けるためには変化し続ける市場に対し自社のプロダクトもフィットさせ続ける必要があります。
PMFは1度や2度で終わるものではなく市場が変化し続ける限り向き合わざるを得ないものになります。効率的効果的に自社のプロダクトを成長させていくためにもPMFに優先順位をつけ一つずつ乗り越えていく必要があります。
市場の変化や顧客の変化に敏感になってキャッチアップを怠らないことが重要です。
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